稲作が日本列島で本格的にはじまった弥生時代以降、平地から山里までいたるところに田んぼがつくられ、お米は日本人の食文化の中心を担ってきました。稲作が日本の気候に適した性質であったことや、土木技術などの発展もあって、田んぼの面積は拡大し、それにあわせて日本の人口も増えてきました。
昭和初期の第二次世界大戦後、日本は大変な食糧難に見舞われましたが、国を挙げてお米の増産に力を入れ、「みんながお腹一杯に食べられる国」をめざして取り組んだ結果、その後の日本は世界第2位の経済大国になるまでに復興を遂げました。
出典:農林水産省「食料需給表(総合食料自給率)」
昨今の日本の食事情でよく話題となるのが食料自給率(カロリーベース)です。約50年前の1970年と2020年の数値を見ると60%から37%に減少しています。この50年で食の多様化やグローバリゼーションが加速し、世界各地の食べ物が輸入されるようになった結果、日本人の食卓はより多彩になりました。しかし一方で、お米をはじめとする国産食材の消費量が減っているのです。ある意味では、食の選択肢が増えたことは日本の豊かさを表している現象の一つかもしれません。しかし、この数字には深刻な問題も潜んでいます。
お米の食料自給率は、50年前も今も、国内生産でほぼ全量が賄われています。しかし、一人当たりの年間消費量は128.5㎏から50.8㎏と約4割に減少しているのです。これに連動して、お米を生産する農家数は約1.5割まで激減しています。この数値は、農業の機械化や圃場整備などの進展で、一人当たりの作付面積が増大していることも大きく関係しています。しかし、「現在の作付面積が限界で、これ以上拡げるのは厳しい」と言う米農家の声は全国各地で聞こえます。農家の高齢化により、これから10年、20年先の農村や田んぼを維持していけるかどうかは、私たちの食の未来にとっても大きな課題です。日本人の米離れにより、各地で米作りの担い手となる農家がいなくなり、米の食料自給率すらも維持できない日がやってくるかもしれません。
出典:農林水産省「お米の消費拡大について」
出典:農林水産省「作物統計」
出典:農林水産省「農林業センサス」
出典:農林水産省「作物統計」
よく言われるのは、外国からの食べものの輸入がストップしたらどうなるのかという問題です。世界人口が増加するなか、家畜の飼料やバイオ燃料の原料としての需要も重なり、世界的に穀物不足が大きな課題となっています。また、突発的な国際的なリスクも無視できません。近年では世界有数の小麦輸出大国であるウクライナとロシアの紛争などにより、小麦などの価格が高騰しています。もしも、思うように食料を海外から輸入できなくなれば、国産品のみで全国民の食料を確保していくことが必要になります。
いまのくらしを未来につないでいくためにも必要なのは、
お米作りを守っていくことです。そのためにも日本のお米を食べることは
非常に重要です。日本のお米は安心して安定的に食べられる食料です。
その恵みに少し思いをはせながら、今日も美味しくごはんをいただきましょう。