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なるほど!米の新発見 脳・腎臓・肝臓・腸・欲にはたらく!5つの最新研究で知る米の力

01にはたらく米

脳の栄養となる糖質を、米が効果的に供給し、神経細胞「ニューロン」を活性化させることがわかってきました。
パン食よりも米食は低GI・低脂質で、脳細胞の成長を助けます。
米食中心の子どもたちのほうが、脳細胞の量が多く、IQ(知能指数)も高いという結果もでてきています。

※GI(Glycemic Index, グリセミック・インデックス):
GIが低いほど食後の血糖値の上昇がおだやかになるとされます。

米食とパン食、朝食種別が
健常小児の脳細胞の成長と認知機能に与える影響

川島 隆太 Ryuta Kawashima
東北大学 加齢医学研究所 所長・教授

最新研究の
ポイント

脳の発達にとって、学童期の食事は重要であり、栄養状態の良好な子どもでは、朝食の質がその認知機能に影響を及ぼすと考えられている。健常小児を対象とし、朝食の主食の種類と、神経細胞・ニューロンが多く存在する「灰かい白はく質」の体積およびIQ(知能指数)との関連性を解析した。朝食の主食としてご飯を食べている群では、脳内の神経細胞量の指標ともいえる灰白質比(頭蓋内における灰白質体積の割合)が有意に高く、IQも顕著かつ有意に高かった。

脳の発達と朝食の関係をMRIで明らかに

朝食の主食の種類と脳の灰白質体積およびIQの相関関係の有無を確認することを目的とし、以下の研究を行った。
これらの解析は、5歳から18歳の健常小児290名を対象として、MRIを用いて脳磁気共鳴画像を撮影し、日々の朝食習慣に関するデータおよびIQデータを収集することにより実施した。
被験者を、朝食の主食により「ご飯群」「パン群」および「ご飯+パン群」、以上の3群に分けた。ご飯群、パン群にはそれぞれ白ご飯、精白パンを普段朝食として食べている被験者とし、ご飯+パン群には、朝食として普段白ご飯かパンのどちらも食べている被験者とした。
灰白質の全域および局所の体積、ならびにIQを、MRI画像を用いた脳体積解析手法(VBM, voxel-based morphometry)を用いて3群間で比較した。VBMは、特定の脳領域に偏らず、脳の形態変化や形態異常を確認することができる。2種類の解析を行い、主要解析ではご飯群、パン群およびご飯+パン群を比較し、副次解析ではご飯群とパン群を比較して、灰白質体積、およびIQにおける群間差を明らかにした。
脳磁気共鳴画像を、ニューロン(神経細胞)が多く存在する「灰白質」、神経繊維が多く通る「白質」、脳脊髄液腔および脳外組織に分けて画像化し、各画像から体積を求めた。次に、灰白質体積を頭蓋内体積で割った値である「灰白質比」を求めた。頭蓋内体積は、灰白質体積、白質体積および脳脊髄液腔体積の和として算出した。

米食主体の子どもは脳の成熟が顕著な傾向

3群比較における全灰白質体積の分析では、ご飯群の灰白質比がパン群と比較して有意に高かった(表1、図1)。さらに年齢、性別、社会経済的状況、1週間の平均朝食摂取頻度、朝食のおかずの品目数で調整した2群比較においても、ご飯群の灰白質比の方がパン群よりも有意に高かった。
局所的な灰白質体積の解析では3群間に有意な差は認められなかった。
しかし年齢、性別、社会経済的状況、平均朝食摂取頻度、朝食のおかずの品目数で調整した2群間比較では、ご飯群は左側上側頭回と左側下前頭回を含む領域および両側尾状核の局所灰白質体積が有意に大きかった(図2)。

米食はIQにもよい影響をもたらす

3群比較においてIQと朝食の主食の関係を解析した結果、群間の有意な差は認められなかった。しかし、年齢、性別、社会経済的状況、平均朝食摂取頻度、おかずの品目数で調整した2群間比較においては、ご飯群では全検査IQ(総合的な知的能力)がパン群よりも有意に高かった。
一方、言語性IQ(vIQ:言語を使用する知的能力)および動作性IQ(pIQ:動作をともなう作業に反応する知的能力)では、ご飯群とパン群に有意な差は認められなかった。
とくに、全検査IQのうちの4種類の群指数に関しては、年齢、性別、社会経済的状況、平均朝食摂取頻度、おかずの品目数で調整した2群間比較では、ご飯群では知覚統合指標(POI:視覚情報を認識する能力)スコアがパン群よりも有意に高かった。

脳のエネルギー源・糖質を米が効果的に供給

本研究ではとりわけ次の新たな知見を示した。
ひとつは、3群比較における全灰白質体積の解析に基づき、ご飯群の灰白質比はパン群およびご飯+パン群よりも有意に高いことが示された。なお、11.2歳超の高年齢ご飯群の灰白質比は高年齢パン群よりも有意に高かったが、11.2歳未満の低年齢ご飯群と低年齢パン群のあいだでは灰白質比の有意な差は認められなかった。
もうひとつは、年齢、性別、社会経済的状況、平均朝食摂取頻度、おかずの品目数で調整した2群比較において、ご飯群の全検査IQおよび知覚統合指標(POI)スコアはパン群に比べて、顕著かつ有意に高かった。
以上の結果より、ご飯群では全灰白質体積および複数領域の局所灰白質体積がパン群よりも大きく、食習慣が長期的に灰白質体積に影響を及ぼすことが示唆される。
こうした結果にはエネルギー含量、血糖特性、主要栄養素組成など複数の因子が影響していると考えられる。
血糖特性に関しては、白ご飯も精白パンも多量の炭水化物を含有している。炭水化物は、主要栄養素であり、ヒト体内での代謝速度が速い。さらに炭水化物は、大量の血糖を与えることから、最も重要な脳のエネルギー源である。

GI値がパンよりも低く血糖の上昇をゆるやかに

血糖特性における白ご飯と精白パンの主な違いはそのGI値にある。日本の白ご飯のGI値は精白パンよりも低いと報告されている(白ご飯:精白パン = 68 : 100)。GI値の低い食品を摂取した際の血糖の上昇は比較的小さく、その後血糖値は安定するため、GI値の低い食品の方が高い食品よりも安定的かつ効率的に糖質を供給できることが示唆される。脳が消費する糖質の大部分はニューロンを安定状態にすることに使用されるため、効率的な糖質の供給はニューロンにとって重要となる。さらに、ニューロン当たりの平均シナプス数は前青年期に増加するため、脳における糖代謝率は小児で成人と比べて約2倍高くなる。したがって、糖質の効率的な供給は小児における脳の成熟に重要である。

脳の成長を抑える脂質もパン食より少ない

また、主要栄養素組成をみると、炭水化物の量を同じとした場合、白ご飯よりも精白パンの方が脂肪の含量が多い。また、日本人若年成人において、普段精白パンを食べる人では白ご飯を食べる人より朝食の総脂肪量がわずかに多いことが示されている。重要なことに、高脂肪食は脳由来神経栄養因子の発現を低下させる結果も報告されている。同因子はシナプスの機能および成熟ニューロンの可塑性に重要な役割を果たす。
以上のことから、ご飯群の灰白質比がパン群よりも有意に高かった理由のひとつとして、両主食のGI値および脂肪含量の差が考えられる。
以上を総括すると、本研究の結果より、白ご飯の摂取頻度増加に応じて灰白質比が高くなることが示唆されており(図1)、全検査IQおよび言語性IQ(vIQ)でも白ご飯を食べるとその値が高くなる傾向が認められた(表1)。
本研究では健常小児290名を対象として、朝食の主食の種類と灰白質体積およびIQの関係を解析した。
結論として、全灰白質体積の解析により、ご飯群ではパン群と比較して灰白質比が有意に高いことが示された。局所灰白質体積は、ご飯群では左側上側頭回などの領域で有意に大きいことが解析でわかった。また、全検査IQおよび知覚統合指標(POI)スコアは、ご飯群はパン群よりも顕著かつ有意に高かった。
朝食の主食の種類が健常小児の脳灰白質体積および認知機能に影響を及ぼす可能性があることから、学童期および青年期の脳の成熟には最適な栄養を含んだ食事が重要であることが示唆された。